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幅 : 6.1cm 高さ : 4.5cm
淡く澄んだ青磁釉に包まれた本作は、ふっくらとした桃の姿を象り、瑞々しい生命の象徴を静謐に表現しています。桃の葉には金彩があしらわれ、柔らかな青の中に金の光がほのかに揺らめきます。以下、五つの観点からその魅力と背景を詳しくご紹介いたします。
丸みを帯びた造形は、まさに実り豊かな桃を思わせます。ふっくらと膨らむ上部と、安定感のある底部のバランスが絶妙で、掌に収まる姿に温かな親しみを感じさせます。上下を合わせた際の継ぎ目も柔らかく溶け込み、自然の果実が持つ有機的な一体感を見事に表現しています。小さな香合ながら、造形そのものが完結した美を備えています。
高橋道八様が得意とする青磁釉は、透明感のある青緑の中に柔らかな乳白のヴェールを纏い、見る角度によって微妙な陰影を生み出します。本作では、桃の膨らみに沿って釉が流れ、釉溜まりに淡い濃淡が現れることで、自然光の中でほのかな揺らぎを見せます。まるで春霞を閉じ込めたような、静けさと温もりを併せ持つ釉調です。
桃の実に寄り添う金彩の葉文は、単なる装飾に留まらず、古来より「不老長寿」「邪気を払う果実」としての桃の象徴性を際立たせます。金彩の線は繊細ながらも確かな筆致で施され、葉脈の一本一本に生命感が宿ります。青磁の淡い色調と金の光沢が響き合い、静と動、冷と温が絶妙に交錯する構成です。
本作はろくろ成形による端正な素地に、青磁釉を掛けて還元焼成を施した後、金彩で葉文を描き再度焼き上げています。高温での焼成により釉面は滑らかに融け合い、金彩の上絵は適度な温度で焼き締めることで輝きを保ちつつ表面になじんでいます。二度焼きによる温度差管理は極めて繊細な工程であり、その精確な窯掌が道八家の技の冴えを示しています。
桃は古来中国において仙果として尊ばれ、日本でも節句や祝儀の象徴として重用されてきました。特に「桃の節句」や「桃花の宴」など、生命の再生と安寧を祈る文様として、茶の湯の世界でも長く愛されてきた題材です。九代 高橋道八様は、京焼の伝統を継承しながら、清澄な青磁と現代的な造形感覚を融合させることで、古典意匠を新たな美として再生させています。
九代 高橋道八様は、服飾意匠の学びを経て陶の道に進まれ、平成八年に八代様(父)に師事、平成二十四年に九代を襲名されました。伝統技法を尊重しつつも、造形と色彩の調和を探求する姿勢は一貫しており、本作にもその精神が息づいています。
掌に宿る静かな輝きの中に、桃がもつ豊穣と再生の象徴性が静かに漂う。
金彩青磁桃は、京焼の洗練と自然の詩情をあわせもつ、まさに現代の名香合といえるでしょう。
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