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幅 : 6.1cm 高さ : 4.5cm
穏やかな乳白釉の肌に、柔らかな曲線で刻まれた「丑文(うしもん)」が静かにめぐる本作は、九代 高橋道八様による「十二支ぐい呑」シリーズの一作です。
古来より“誠実・忍耐・大地の力”を象徴する丑の精神を、簡潔な線と穏やかな釉調の中に見事に表現しています。
器形はややふくらみを持たせた碗形で、胴から高台へと滑らかに収束する穏やかなラインを描きます。
高台はやや高めに設けられ、全体のフォルムに軽やかさと気品を添えています。
手に取ると掌にすっと馴染む厚みと丸みがあり、九代様の造形に宿る“用の美”が際立ちます。
釉薬はやや厚めの乳白釉で、淡く透ける胎土の温もりが器に深みを与えています。
表面には微細な貫入(かんにゅう)が生じ、光の角度によって柔らかな陰影を生み出します。
焼成による火のあたりが底部にわずかに現れ、白一色の中に豊かな表情を添えています。
口縁下をめぐる刻文は、古代象形文字に由来する「丑(うし)」を抽象化した意匠です。
丸みを帯びた線が連続し、まるで田畑を耕す牛のゆったりとした歩みを思わせる穏やかなリズムを刻んでいます。
丑は十二支の第二にあたり、“誠実”“忍耐”“着実な成長”を象徴。
この刻文には、静けさの中に宿る確かな力、そして自然と共に生きる古の叡智が表れています。
文様は乾燥の段階で鉄筆により一筆ずつ刻まれています。
釉掛け後、焼成によって刻線の凹部に釉が薄く入り込み、光を受けると穏やかな陰影を帯びる「釉中浮彫(ゆうちゅううきぼり)」の表現が現れます。
文様はあくまで控えめでありながら、手に取るたびに浮かび上がるような深みを感じさせる繊細な仕上がりです。
干支の「丑」は冬の真只中、種が地中で力を蓄える時期を示します。
外に現れずとも、内なる力が次の春を待ちながら静かに息づく――その姿こそ、忍耐と誠実の象徴です。
九代 高橋道八様は、その精神性を、華やかさではなく“静の造形”として表現。
線と釉、形のすべてに「沈黙の力」が宿る、まさに丑年にふさわしい作品です。
九代 高橋道八様は、服飾意匠を学ばれたのちに八代様に師事し、平成二十四年に九代を襲名。
伝統京焼の技巧を受け継ぎながら、現代的な造形感覚と象徴的なデザインで高い評価を得ています。
本作「ぐい呑 丑」は、穏やかな乳白釉と優しい刻線が奏でる静謐の美。
掌に包めば、ゆるやかに流れる時間とともに、静かな力が内に満ちていくような感覚を覚えるでしょう。
日々の盃としても、季節の節目を寿ぐ器としても、長く寄り添うにふさわしい逸品です。
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